シン・ゴジラとシン・ウルトラマン、そしてシン・仮面ライダーと、庵野秀明(と樋口真嗣)の手に成る特撮ヒーローのシン・シリーズを完走した。*1
今回のシン・仮面ライダーを観てはっきりと思ったのは、このシリーズは偏に、元ネタの理解度が観た時の面白さに比例するということだ。私の理解度がゴジラ→仮面ライダー→ウルトラマンの順なので、シン3作品の楽しさもこれに比例していた。
この理解度=面白さの理由は、元ネタの膨大さ、つまり映画のみ(ゴジラ)か、長く続くTVシリーズ(ウルトラマン、仮面ライダー)を含むかによって盛り込みたい小ネタの量が増減するからではないだろうか。
そして庵野秀明は、膨大な小ネタを時々唐突とも言えるポイントで入れてくる人なのだ。
シン・ゴジラの時も、(そこは初見の人は流すだろうな…*2)というポイントに小ネタが挟まれていたが、ゴジラという作品がアメリカ製作含め30本ほどしかなく、しかも既に何度も焼き直しをされているキャラなので割とガラッと変えてしまっても特撮ファンは許容し、初見の観客には怪獣映画というよりディザスタームービーとしてウケたのだろう。
シン・ウルトラマンの時は、私がまるで元ネタに詳しくなかったため、全部上滑りになってしまった。ウルトラマンに詳しい身内でも、「あそこまで入れてくるか…」というマニアック振りだったようで、その面白さが理解できなかったのは残念だなと思う。
で、仮面ライダーについて私の理解度だが、
・テレビシリーズはクウガとカブトを完走
・1号〜ゼクロスまでのざっくりとした知識は数年前に読んだ仮面ライダーSPIRITS(マンガ)で履修
という程度。
そして以下は、私がシン・仮面ライダーを観ている間に自分の仮面ライダー履修度を試されて、辛うじて拾えたのではないかという部分。
・本郷猛がショッカーに改造されて仮面ライダーになるとか、一文字隼人の本職がフォトジャーナリストだとかは知ってる。が、縁川ルリコとか立花のおやっさんとかの記憶は朧げ。→竹之内豊が名乗った時にもポカーンだった。斎藤工が名乗った滝に至っては誰?レベル
・仮面ライダー1号はサイクロン号(バイク)に乗っている時の風(風圧?)でベルトの風車を回して変身する。→サイクロン号に乗りながらフワッと立ち上がって変身するシーンはカッコよかったな!
・敵とはいえ殺しまくることに対する葛藤を抱く本郷猛→テレビシリーズの1号は観たことがないけどクウガで苦悩するヒーローというテーマを扱ってたので馴染みがあった。
・仮面ライダーはもともと1号も2号もいなくて、本郷猛を演じアクションも担当していた藤岡弘が撮影中に左足を骨折したために急遽2号を出した。→シン仮面ライダー劇中にも1号の左足が折れるシーンがある。
・伝統的に仮面ライダーの1番最初の敵はクモ男、次はコウモリ男と決まっている。→履修済みだ!!
・ケイという名前のロボット→家人曰く「あれキカイダーのオマージュじゃないか」私「あーキカイダー!…何だっけ」
観客のことを信じている、と言えば多分そうなんだろう。
ただ、完全初見の観客を想定すると、肝心の本郷猛の人となりや、ショッカーに改造されるくだりは初めから丁寧に描いた方が良かったのでは、と思う。仮面ライダーSPIRITSで読んだはずの私も少し忘れており、やや置いてけぼり感があった。
映画を観ていて、置いてけぼりになるのは割とよくあるのだが、置いてけぼりなりにも勢いに乗って楽しめるものと、振り落とされるものに分かれる。
しかし庵野秀明は、その勢いを殺しがちな方のクリエイターだと思うので、それでもついてきて欲しければ多少の譲歩はして欲しかったところである。
改造直後の本郷猛が戦う時の泥臭さやバイクチェイスシーンのスピード感、キャラによる殺陣の違いなどは観ていてとても楽しかった。
恐らくこれは、数回通って噛み締めながら観ると余計面白い映画なのではないかと思う。そう思わせる「惜しさ」がある。