ファンタスティック・ビースト/ダンブルドアの秘密を観たのは、かれこれ3か月ほど前のことだ。鑑賞後にすぐこの記事を書こうと思っていたのだが、生来の怠け癖が祟って今日まで寝かせておいた。
映画『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』オフィシャルサイト
【ワーナー公式】ニュース|『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』8.19ブルーレイ・DVDセル&レンタル開始!
寝かせておいたら、ブルーレイ&DVDが8月19日に発売ということで、タイミング良かったかもと思いながら投稿してみる。
※なお、以下に映画のネタバレが含まれます。
ファンタスティック・ビースト3作目である今作は、副題にあるようにホグワーツ魔法学校の校長、ダンブルドアが中心に据えられたストーリー展開だった*1。
映画冒頭からダンブルドア(ジュード・ロウ)とグリンデンバルド(マッツ・ミケルセン)の逢瀬に始まり、2人の過去の因縁が絡みに絡み合って、その愛憎で濃密な味わいになるかと思いきや、前作よりニュート・スキャマンダーの言うことを聞くようになった魔法動物を添えて味変しつつ、最後まで飽きずに観せる手法だった*2。
閑話休題。
今回深読みするのは、映画のラストでグリンデンバルドが最後に言った言葉である。
グリンデンバルドはダンブルドアやニュートたちの尽力により自身の企みを暴かれ、他の魔法使いたちにも追い詰められ、そしてこう言う。
"I was never your enemy. Then or now."
「私は敵だったことはない。これまでも、今も」(字幕うろ覚え)
初めて聴いた時から不思議だった。
現在完了形でなく過去形を使ったのも不思議だったし、"Then"を使ったのも不思議だった。
まず、“I was never your enemy.”の部分を見ていきたい。
もし、グリンデンバルドが魔法界にとって良かれと思ってやったことを弁解しているなら、現在完了形(“I have never been your enemy.”)でも良さそうなものなのに、なぜ過去形なのだろう。
ここで過去形と現在完了形の違いを見てみよう。
- 過去形→過去のある特定の時点
- 現在完了形→過去から現在に至るまでの関係がある事柄
グリンデンバルドが声をかけた相手が魔法使いたち全てで、なおかつ現在完了形だったとしたら、策略を巡らせて魔法省の議長になろうとしていた一連の出来事について「私はあなたたちの敵としてやっていたのではない」と言いたかったのかもしれない*3。
しかしグリンデンバルドは過去形(過去のある特定の時点を示す)を使い、しかも“Then”を付けた。
念のためthenを辞書を引いてみよう。
then (過去・未来の)その時, その[あの]ころ, 当時
ここで注目したいのは、グリンデンバルドと彼を追い詰めた(ダンブルドア以外の)魔法使いたちには、グリンデンバルドが「あの時」と仄めかすほどの関係性が過去にあったのだろうか?という点である。
そう考えると、グリンデンバルドの言葉は、彼の過去のある時点で彼と袂を分かった人物──つまりダンブルドアひとりに向けられたものだったのでは、と言えないだろうか。
“Then or now.”のThenは、2人の対決によりダンブルドアの妹アリアナを死なせた戦いを指し、nowはまさに劇中の「今」、グリンデンバルドが魔法省の議長になろうとした企みをダンブルドアが暴き出した時のことだろう。
つまり、2人の仲が終わった、というかダンブルドアがグリンデンバルドに背を向けた“あの時(Then)”ですら、また自分の策略をダンブルドアが打ち砕いた“今(now)”ですら、(ダンブルドアがどう思っているにせよ)グリンデンバルドはダンブルドアを敵とは見做していなかった(“I was never your enemy.”)、ということになるのではないだろうか。
そう考えると、グリンデンバルドのダンブルドアへの矢印が極大だなと、そう思ったというだけの話である。