ボルダリングにハマってアクション映画のヒーローのアレを心配する

先日、トム・ホランド主演のアンチャーテッドという映画を観た。ゲーム原作のアクションたっぷりな映画だ。

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トム・ホランドと言うとMCUスパイダーマン役が有名で、スパイダーマンでない彼がアクションをしている姿を見るのは初めてだった。蜘蛛のようにジャンプして壁に張り付くことも、スパイダーセンスも、人間離れした怪力も持たないトムホ*1が飛び跳ねているのを見るのは新鮮だった。

そして、薄々気が付きつつも気が付いていない振りをしてきたが、ここ1年余りボルダリングに通い詰めているせいで、映画で(生身という設定で)華麗なアクションをやっている人たちを見ていると、「この動きボルダリングにありそう」「この高さと足場なら私でも登れそう(9割9分9厘無理なのだが)」「これだけ動けたらボルダリングめちゃくちゃ上手そう」などと思うようになってしまった。
アンチャーテッドはその点、見所がありまくりの1本だった。


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ボルダリングには、「ランジ」や「ダイノ」など、いかにもスパイダーマンぽい、壁から壁へ飛び移るド派手な動きがある。


これらの動きを見ていると、アクション映画に出てきそうだなと思う。

で、初めて自分のボルダリング視点を感じたのは、スパイダーマンと同じMCUの映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の冒頭、バス車内での格闘シーンを観た時だった。

主役のシャン・チーは、平和主義な顔をしていながら実はカンフーの達人なのでとても強いのだが、私が注目したのは、シャン・チーが2両つながったバスの外に出て側面や屋根に貼り付くシーンだ。
バスの側面は窓もあるしわずかに掴まれる箇所がありそうだが、屋根ともなるとほぼ凹凸がない。しかも(詳細は省くが)シャン・チーの親友ケイティが運転しているのである。
件のシーンから見たい方は03:30〜から。

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シャン・チーは複数の敵を相手に、走行中のバスの外に出て、窓の上の凹凸に掴まり、次に割れた窓ガラス(!)の枠にしがみつき、次にバスの屋根に上に飛び乗り、そのままバスの運転席横のミラーの支柱を握って大回転をする。

私の脳裏にふとした疑問が過ぎる。手は、指の皮は無事か?

もちろんこれは映画で、シャン・チーのアクションにはワイヤーアクションが多用されているはずだ。だから手指の心配は無用、それはご尤も。しかしそれでも気にはなる。というか考えるのが楽しくなってくる。

シャン・チーは高校生くらいから自分がカンフーの達人だということは隠して生きている。劇中、大人になったシャン・チーが行うトレーニングはせいぜい腕立て伏せだけ。これではバスの外に掴まる手指の皮は育つのだろうか?

指皮というやつはターンオーバーの鬼である。2週間も使わないで放置すれば、「あっ、もうこの分厚い皮、要りませんよね?」とボロボロ剥けてくるのだ。

前の記事にも書いたと思うが、と書いてから見直したら手のことは書いていなかった(手首他関節のことは書いていた)ので初めて書くのだが、ボルダリングをやっているとまず手をやられる。ボルダリングをやり始めた頃、私が抱いていた感想は「手に厳しいスポーツ」だった。素手で身体を支えて登っていくので、その負担は決して小さくない。*2

そして思った。これまで観てきたアクション映画でも、ヒーローの手指は酷使され続けてきたのではなかろうか。

しかしここ10年、映画館で観るものと言えばキャラクターが軒並みスーパーパワーを持つMCUや、たまにゴジラ/モンスターバースを挟んだりモータルコンバットを挟んだり、人間離れした人が出る(一部は人間ですらない)映画ばかり観てきた気がする。

いやいや、言っても割と映画館には通ってきた方だ、何かしら、というか絶対何かあるだろう。とぐるぐる考えて出てきたのが、トム・クルーズ*3主演映画ミッション・インポッシブル:ローグネイションの冒頭シーンだった。
イーサン・ハントが、というかトム・クルーズが「人間離れしていない人」なのか? という議論は置いておいて欲しい。超人血清も、蜘蛛の力も、テクノロジーを駆使する頭脳と資金も、はたまたクリプトン星出身でもないことを「人間離れしていない人」にカテゴライズしないと話は始まらない。


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トム・クルーズが演じるイーサン・ハントが、輸送機のドアの外側に掴まったまま離陸するシーンだ。イーサンが輸送機のドアの周りにある何かよくわからん凹みに両手で掴まる。始めのうちは片翼に足がついているが、飛び立つにつれてもう足は風圧で持っていかれ、頼れるのは両手のみ。手指に厳し過ぎる。
実際のところ、掴まるには手指だけが大事なのではなく、指の強さを決めるのは手の甲から前腕部に伸びる複数の筋(腱)と筋肉なのだが、それにしたって10本の指に全てが懸かっているのは荷が重くないか?

トム・クルーズはこういうスタントを自ら行うことで有名である*4。まさかこれも? と思って検索したら、ネット記事を見つけた。

screenrant.com

...he was actually strapped to a full-body harness which in turn was wired and bolted to the interior of the aircraft.

それによると、トム・クルーズはもちろん自分でこのスタントをやったが、しっかりハーネスを着け、それらは全部飛行機の内側に固定されていた、とある。ただ引用文の前には、その飛行機の撮影は8回行われたとも書いてあった。手についての記述はなかったのだが、撮影後の映像処理は最低限だったと言うし、恐らく素手で掴まっていたのだろう。

トム・クルーズ、やっぱりとんでもねえな、と思った。そういや宇宙で映画撮影ってのはどうなったんだろうな。ミッション・インポッシブル:フォールアウトでは足首骨折してた*5し、手に限らず気を付けて欲しいな。

結果的にトム・クルーズのことを心配するみたいな記事になってしまったが、この先観るアクション映画で新しい視点を得られたのは楽しみなことだと思う。

最後に、上記のミッション・インポッシブル:ローグネイションの飛行機に掴まるイーサン・ハントが、いろんなものにしがみついているコラ画像としてネットミーム化しているのをインタビュアーに初めて見せてもらい、ツボに入って笑い過ぎて水をもらうトム・クルーズを置いて、記事の締めとしたい。

youtu.be

 

 

 

*1:トム・ホランドの略。主にTwitterで使われる。他に、トムハ(トム・ハーディ)、トムヒ(トム・ヒドルストン)など。

*2:余談だが、ボルダリング後にスーパーで買い物などしようものなら、レジ袋を開ける時にひと苦労が待っている。指先に力が入らない上、小刻みに震えるのでまったく開かない。おまけに、登る時に滑り止めのため手にチョークを付けるのだが、これがまた覿面に手の水分を持っていくため余計にレジ袋が開かない。

*3:この記事、何回トムって書くんだ? ちなみにトム・クルーズの略称は統一していない(個人の見解)。私はTwitterでは「おトム」と呼ぶ。何か唯一無二な感じがする。

*4:通常は主演俳優にこういうことをやらせるのはプロデューサーが良しとしないが、ミッション・インポッシブルシリーズはトム・クルーズ本人がプロデューサーのため、止める人がいないのである。

*5:ビルからビルへ飛び移るスタントシーンを撮影中、ジャンプをミスってビルの壁に足首を強打、骨折したが、そのままよじ登ってシーンを撮り切った。骨折シーンが劇中にも使われた稀有な映画。