初コミコン記録⑥(ACEコミコン1日目:運営大丈夫か編)

(※長文なのでおヒマな時にどうぞ)

 

前述した通り、コミコンは金土日の3日間行われ、初日が始まるのは午後4時からである。

Aさん、Bさん、そして私はヘンリーのVIPチケット(フォトオプ&オートグラフは日曜日)を取っていた。VIPチケットには3日分の入場券が含まれているので、まずネット経由で買ったeチケットを引き換えなければならない。

私たちの本番は実質2日目からだが、会場の下見もしておきたいし、チケット引き換えがてら行ってみることにした。

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会場はNassau Veterans Memorial Coliseum

全天候型のスタジアムで、NBA(バスケットボール)のLond Island Netsのホームだ。

写真を見てもわかる通り、とても大きい。Uberのドライバーにスタジアム近くで降ろしてもらったが、入口までずいぶん歩いた。そしてようやく入口と思われる所まで近付いていって、私たちは嫌な予感を抱く。スタジアムに着いたのは午後4時ぴったりだったが、既に長い行列が出来ていた。写真の真ん中を横切る黒い線のすべてが人である。

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列は2本出来ており、スタッフらしき人が「こっちはVIP、こっちは一般入場」と案内している。私たちは当然VIPの列に並んだが、これが一向に進まない。なぜか一般入場の列はどんどん進むのに、VIPの方は30分に数歩進むくらいだった。

列に並ぶ人たちはだんだん苛立って来ていた。

午後4時半過ぎには日が沈んで辺りは真っ暗になった。そしてこの日の気温は、iPhoneによれば3℃くらいだったが、遮るものの何もない吹きっさらしで、しかも風が強かった。

私たちは2日目からがメインくらいの気持ちでいたが、WWEのレスラーとのフォトオプやオートグラフは1日目だけのイベントであり、それを目当てに来た人が多かったに違いない。実際、一緒に写真を撮ろうとチャンピオンベルトを小道具に持ってきたり、思い思いにコスプレをしていたりする人たちが、大した厚着もせず吹きっさらしの冬空の下で並んでいた。

彼らに非はない。車移動が中心の生活をしていれば、自然に薄着になるのはやむを得ない。暖かい場所から暖かい車内に乗り込み、そのままさっと外を歩いて再び暖かい屋内へという流れなら、分厚いジャケットやコートは却って邪魔になるからだ。

私たち3人は、とりあえずは皆ダウンコートを着てきていた。というか20時間ほど前に日本から飛行機に乗った時とほぼ変わらない格好だ(少なくとも私は)。薄着ではなかったが、体感気温0℃の中でじっとして待つことを想定してはいなかった。

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コミコンは主催者側の運営の問題が云々、と聞いたことはあるけれど、まさか海外でこんなことになろうとは。あまりに寒いので時々手分けして列の前に行き状況を確かめたりしていたが、そのうち私たちの少し前で並んでいた人たち(男性グループだったと思う)が騒ぎ出した。英語で断続的に運営に対して不満を言い始めた。その声がすごく大きくて、周りに聞こえるように話しているような感じだった。そのうちグループのうちの1人が前に行き、戻ってきて何やら大声で叫ぶと、私たちの周りの数十人が一気に列から離れ前へ走り出した。私たちは状況がつかめなかったのでその場に留まり、結果的に少し列が進んだが、しばらくすると前に走っていった集団が戻ってきて私たちの後ろに並んだ。

つまり男性グループの1人が何を言ったのであれ、デマだったのだろう。

人を煽るというのはこういうことなのか、と身を持って知った気がした。抑圧された状況下で誰か大きな声で「こっちに来た方がいい」などと叫べば、何人かはついて行ってしまう。

私たちも理不尽な思いは感じていたが、周りの人たちの怒りがあまりに激しいので、却って冷静になっていた。

私は状況を知りたくてAさんとBさんを列に残し先頭まで歩いて行った。VIPの列の先頭のその先にガラス扉があり、金属探知機のゲートと荷物検査のためのテーブル、そしてその右奥にやはり長いテーブルの中で大量の段ボール箱に囲まれ右往左往する数人のスタッフが見えた。段ボール箱には各俳優の顔写真がプリントされたネックストラップ付きのVIPカードが乱雑に積み上がり、別の箱にはノベルティのトートバッグがやはりぐちゃぐちゃに入っていた。長テーブルを境に入場した人たちがeチケットをプリントアウトした紙を握りしめ、幾重にも重なって我先にVIPカードをもらおうとしていた。そこに列も何もなく、文字通り殺到していた。

私は列が進まない理由を知った。私の隣に、やはり列に並んでいたらしいアジア系男性が同じように覗きに来ていた。「どうなってんの?」と彼は私に訊いた。私は中を指差して「スタッフが足りてないみたい。めちゃくちゃだよ」と答えた。彼は同じように覗き込み「あー、ダメだねこんなんじゃ」と首をすくめた。苦笑いしながら言葉を交わして、私は少し気が楽になった。少なくとも一緒に、冷静にしかし呆れつつ屋内の惨状を眺められる名前も知らない同志がいたからだった。

私は列に戻ってAさんとBさんに状況を説明した。結論としては、待つという選択肢しかなかった。その時点で1時間半は経っていたと思う。

一般入場の列はほぼなくなっていた。

そうしてまた前の方が騒がしくなり、またデマかなぁなどと思いながら私が偵察に出た(言及が遅れたが、今回私は英語担当なのだ)。

www.youtube.com(映像は、あちこちで口々に不満を言う人々が出始め少し場が緊迫した時の様子)

 

一般入場の列のドア近くに、ボランティアと書かれたTシャツを着た複数の男女スタッフが立っていた。口々に怒鳴る人たちの声が断続的に聞こえてきた。複数人が彼らに詰め寄り、状況の説明を求めている。しかしスタッフも明らかに戸惑っていて、突然とんでもない大声で「いいからみんな聞いて!」なんて叫び出すスタッフもいた。確実に逆効果で、そのスタッフに「聞いてとかじゃない!どうなってるのか教えて」と声を荒げる女性もいた。スタッフの方は「私にもどうなってるのかわからない」とか言ってた気がする。

私はすぐにその人に訊くのは諦め、もう少し話が通じそうなスタッフに近づいた。すると彼は、「とりあえず一般入場の入口から入れ」と言ってペラペラの紙のチケットをくれた。「友達と私はVIPチケットを買ったんだけどそれはどうすればいい?」と訊いた。すると彼は「いまVIPの列はあんなに長い。一旦一般入場で入って、後でまたVIPの列に並び直すか、もしくは明日また来てくれ」と言った。

私はAさんとBさんのもとへ戻り、話し合って一旦屋内に入ることにした。この時点で時刻は6時を回った頃だっただろうか。イベントは9時まで行われる。VIPチケットは引き換えたいが、列が短くなってからまた並び直す方が凍えるよりはましに思えた。

VIPの列を離れ、一般入場の入口で仮のチケットをもらい紙のリストバンドを付けられスタジアム内に入る。荷物検査のスタッフのお兄さんが「How’s it going?(調子どう?)」とか訊いてきた。英語の定型文みたいな挨拶で、そう訊かれても大抵はGoodとかPerfectとかポジティブな返事をするのが定石だけど、私は全力で「Freezing!!(凍えてる!!)」と答えた。それに対しては「じゃああったまってけよ!」と返ってきたので「オーケー!!」って言った。

 

何とか入れたスタジアム内は、めちゃくちゃ暖かかった。外の凍りつくような寒さが嘘のようで、数時間振りにまともに呼吸できた気がした。スタジアム内の空調は完璧で、外にいる時にはホットドリンクが欲しいと思っていたのに、しばらく歩き回ったら冷たいものが飲みたくなるくらいだった。

あの数時間は何だったのか、と思うほどだった。半ば呆然と会場に入り、まだ人の少ないアーティストアレイやグッズのブースを見つつ、その時行われていたパネルステージを覗いてみて、また呆然とした。

ステージに上がったゲスト(アメコミのアーティストさんたちなど)は、ほとんど誰もいない客席に向かって話をしていた。

これはあんまりだ。

1日目しかないフォトオプやオートグラフ目当てにVIPの列に並んだ人たちの中には、時間になっても入場できなかった人も多かったようで、後でツイッターを見たところ、運営への不満をいくつも見た。公式Facebookページにも不満のコメントが殺到したそうだが、それらのコメントは運営によって削除されたとも書いてあった(真偽のほどはわからない)。中には払い戻しを求めたツイートもあったが、果たしてそれが叶ったのかどうかもわからない。

しばらく会場内を回り、頃合いを見計らって改めてVIPの列に並んでみることにした。すると今度は、屋外と屋内で2本の列が作られていた。屋外の列がなくなったところで屋内の列が進むようになっており、寒い場所で並ぶ必要がなかっただけでずいぶん楽だった。

そしてようやくチケットを引き換えられた。ネックストラップ付きのプラスチックカードとフォトオプ、オートグラフとパネルのチケット、そしてノベルティが入ったコミコンのロゴ付きのトートバッグ。

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これを引き換えるまで長かった…。

 

チケット引き換えが終わったところで私たちは充分に疲れてしまい、ホテルへの帰路に着いた。

明日からの運営が今日よりマシでありますようにと願わずにおれなかった。